Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.722 Zeichen · 286 Bildschirme
「ちぇっ」
といって身を躍らすと、松の幹へ足をかけて、早くも三間ばかり走りのぼってしまいました。突きはぐった神尾主膳、天井裏の鼠をねらうように、槍を空につき立ててみたけれど、もう駄目です。そこで、あせって、しきりに空をのぞんで突き立てたが、手ごたえがないので、いよいよじれ出しました。
木の上でホッと息をついた裏宿の七兵衛、
「神尾の殿様……私はあなた様に追われようと思って上ったんじゃありません、あなた様のおためになって上げようと思って上りました、それを、いきなり槍玉にかけようとなさるのは驚きました」
「憎い奴」
「神尾の殿様、落ちついてお聞き下さいまし」
「憎い奴」
「私は、あなた様にお目にかかった上で、ご相談を願いまして、それからひとつ、あの千隆寺へ行ってみようかとこう思いまして、穏かに上ったつもりなのですが……」
「千隆寺?」
その時、神尾主膳は忘れていた記憶が蘇って来たものと見え、
「うむ、千隆寺」
と叫んで歯噛みをしました。
「その千隆寺へ、実は七兵衛が、お絹様のおともをして行ってみたかったんです、ところが、どうも、そうはいきそうもございませんものですから、あなた様と御相談をした上で、ひとつ搦手から乗込んでみようと、こう思いついて上ったのに、いきなり槍玉の御馳走は驚きました」