Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.467 Zeichen · 168 Bildschirme
「あなたのそれは、世にいう娼婦の情けというようなものではありません」
この言葉が、お雪ちゃんにはよくわかっていなかったが、
「そういうわけではありませんが、今度の人は宇津木兵馬さんというのが本名で、それも今日にはじまった縁ではなく、上野原以来、奇妙な縁がつながっているのです。でも、あの人がいては、弁信さんに限っての話ができませんから、こうしてあなたの後を追いかけて、こんなところでゆっくりお話のできるのがかえって安心だと思いました。まあ、何からさきにお話ししていいかわかりませんから、思いついたまま、順序なくお話をしますから、弁信さん、ゆっくり聞いて下さいな」
お雪ちゃんはこう言って、なんとなく暢々した気にさえなったのです。先程からの急促した気分はようやく消えて、ここではじめて、昔馴染に逢って、心ゆくばかり話のできるような気分にさえなりました。
だが、あたりの光景を思い合わせると、決して左様な暢気なものばかりではないのです。ただ、今日は不思議に噴火の爆音が途絶えたような気がする。毎日毎日連続的に聞かされていた焼ヶ岳方面の火山の音というものが、今日に至って終熄したというわけではないが、噴烟はここ十里と隔たった高山の宮川の川原の土手までも、小雨のように降り注いでいるのです。