Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.374 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

自分の無力を歎くと共に、お君さんの不幸な一生を、歎いても歎き足りない気でいます。その時の自分の心には、宇津木兵馬というものだけがあって、そのほかの男性のことはありません。この世で、いちばん縁のありそうな人で、その実、いちばん縁のないのが兵馬様であります。紙一重の違いが、いつでも千里の外にそれる、それをお松は、運命というものは、いつもこうしたものだと、雄々しくもその時に思いあきらめて、更に新しい仕事を、新しい勇気を見つけては、ここまで進んで来ました。

海上の生活から、今の役目が重くしていそがしいために、このごろは思い出すこともなく、お君と、兵馬のために、心の痛手を病むことが少なくなって来ていました。それを、このごろ再び、物思う身となりました。昔は人の身、今はわが身というような、言い知らぬ心の痛みが、お松を悩ますもののようです。

ある時は、お君さんに済まない! というような夢心地になって、ハッと我にかえることさえありました。お君さんの運命が、今日となって、わが身に降りかかろうとは、それは夢の外の夢のような思いに堪えられません。

それから、お松はなるべく、主人の室に遠ざかって仕事をしようとしました。