Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.838 Zeichen · 204 Bildschirme
まあ、こんないい月夜を、日本の国で一とか二とか言われる風景のところでながめながら、自分というものの身もはかないものだと――お松は岸に立ったなり、何となしに涙がこぼれてまいりました。
思えば、あの大菩薩峠の上の出来事以来、自分の身世も、あちらに流れ、こちらに漂うて、幾時幾所でいろいろの月をながめたが、この世に自分ほど不運なものは無いとは言わないが、自分というものもまた、あまり幸福にばかり迎えられた身とは思えない。京島原の月、大和三輪初瀬の月、紀伊路の夜に悩んだこともあれば、甲斐の葡萄をしぼる露に泣いたこともある。定まらぬ旅路の中の旅路の身、昨夜は大海の上で、今宵はこうして松島の月をながめているけれども、明日の夜はいずれの里に、いかなる月をながめるか計られない。
それはなにも自分に限ったことはない、誰にしても、本当にこれでよいと落着くことのできないのが人間の一生で、落着くところはすなわち墓――というほどの、ひとかどのさとりの下に愚痴をこぼさず、感傷に落ちないお松でしたけれども、こうして静かに海岸の月夜を歩かせられていると、泣かないわけにはゆきません。