Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.838 Zeichen · 204 Bildschirme
老女にも、船夫風情にも合点のゆきようはずはありません。
ひとり、清澄の茂太郎が、それから船一杯にうろたえ廻りました。
「先生――大変です、ムクが眼の色を変えて飛び出しました、あの犬が眼の色を変えて飛び出すからには、よほどの大変があると見なければなりません。ごらんなさい、これほどわたしがうろたえているのを顧みもせず、真一文字に海を泳ぎきって行くのをごらんなさい、岸へ向って行くから、変事はきっと岸の方にあるのです。ですけれども、岸は遠いです、ごらんなさい、町の火影が星のように小さく、あんなに微かに見えるではありませんか。皆さん、わたしたちは興に乗じて少し来過ぎました、岸が遠過ぎます、いかにムクだって、翼があるわけではありませんから、この海を泳ぎきって、あの岸まで行く間には時間がかかります――ああ、わたしたちは、いい気になって、月に浮かれ、景色にみとれ、少し遠くまで来過ぎてしまいました」
茂太郎は、こう言って船べりに地団駄を踏むのです。
重ね重ね、呆れ果てている白雲も、玉蕉女史も、事の仔細は紛糾交錯して何だかわからないが、そう言われてみると、自分たちは、たしかに岸を離れること遠きに過ぎたという感じだけは取戻しました。