Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.838 Zeichen · 204 Bildschirme

Aozora Bunko

それから駒井甚三郎は、歩廊の間を歩いて、コック部屋のところへ来ると、ここで金椎君を見舞ってやりたい気になりました。それは今の団欒の中に、金椎とお松だけが加わっていないらしいから、駒井はここへ来て、扉をコツコツと叩いたが、叩いても叩きばえのする金椎でないことに気がつくと、そのまま扉をあけ放しました。

普通ならば、どちらからか言葉をかけなければならないのですが、ここではそうする必要もなく、開けて見ると室の真中に蝋燭が一本かすかに光っているその前で、ひとりひれ伏している金椎を見ました。

駒井が入って来たのに驚きもしないのは、それは、全然気がつかないであちら向きにつっぷしているからであります。といっても、そこで熟睡に落ちているわけでも、居眠りをしているわけでもありませんでした。金椎は卓子を前にして、何かしら厳かな唸りを立てている。しかし、その唸りは病苦に悩んでの唸りではない。

その光景を見ると、駒井は何か知らん厳粛沈痛なるものの気分に打たれて、突立ってしまいました。駒井は、金椎がこうして密室の中に、ひとり深い唸りを立てている光景を見たのは、今宵にはじまったことではないのです。