Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme

Aozora Bunko

「夜中に、泣いていました」

「では、急病でも起ったのか知ら?」

「わたしも、そう思いましたから、暗い廊下を半分ばかり駈けつけてみましたが、急にやめました」

「どうして?」

「泣いていたお雪さんの部屋に、人が一人いるようですから……」

「誰ですか、あの久助さんですか、そういえば久助さんもいない」

「いいえ、久助さんでは……」

といって語る人が、おのずから言葉がふさがって、顔色があおざめ、くちびるがふるえ、歯の根が合わないものですから、委細を知らない人たちまでがゾッとして、水を浴びせられたような気分になりました。

その翌日も、お雪は、炉辺の一座へ顔を見せませんでした。

けれども別に病気でないことは、ひとりでお湯につかっていることもあるし、廊下ですれ違った人もあるのですから、その点は心配はないが、湯に入っている時でも、人を見ると逃げるように、廊下で逢う時も、わざと顔をそむけるようにして通り過ぎるのを、いつもの快活な人に似合わないと、噂をする者もありました。それで、あの娘は病気でもなんでもないけれど、連れの人が悪いので、それがためにお雪も出ぬけられないのだろう、と解釈する者が多くなりました。