Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
しかしね、弁信さん――
自分が一度も病気になった覚えのないものには、病人の本当の苦しみというものはわかりませんのね。ただ明るいところばかり見ている人は、それはこの上もなく結構には違いありますまいが、暗いところの本当の楽しみ……または苦しみといったものに、本当の理解がしていただけるかしら。それが、ふと、わたしの胸にあったものですから、ツイ、わたしはこの神主様の前に、一切を打明けることを躊躇いたしましたのです。
あまりにこの神主様は、すべてが明るく、かがやかし過ぎます。
それが、弁信さん――
あなたならば……あなたは明るいということを知りませんから、あなたに向っては、たとえば、どんな自分の罪でも、けがれでも、すっかり打明けて、恥かしいとも、悔しいとも思いませんが、あの神主さんの前では、まだどうしても、自分を開いて見せようという気になれませんでした。
そこで、口先をまぎらかすように、わたしは、神主さんの言葉尻について、
『けれども神主様、暗いところがあればこそ、明るいところもあるのじゃありませんか、夜があればこそ、昼もあり、悪があればこそ、善もあるのじゃありませんか……人はそう明るくばかり活きられるものじゃありますまい、罪とけがれに生きているものにも、貴いところがあるのじゃありますまいか……』