Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme

Aozora Bunko

「いやよ、いけないよ、茂ちゃん」

女は再び言って、まだ眠りからさめないで、手で顔の上を払いながら、

「いやだってば、茂ちゃん」

ウスノロ氏は指を出して、娘の頬を二三度突ッついてみたものだから、

「茂ちゃん、いやだってばよ」

女は四たびめに、手で自分の頬先を払って、ようやく眼をあいて見て驚きました。

「あ!」

それは茂ちゃんではない、全く茂ちゃんとは似もつかない――似ないといっても、想像以上の、髪の毛のモジャモジャな、眼の碧い、鼻の尖った、ひげの赤い、服の破れた大の男が、今しも自分を上から圧迫するようにのぞき込んで、棒のような指で、自分の頬をつついているのを見ると、

「いけない!」

娘はパッとはね起きると、大の男が口早に何か言いました。

何か言ったけれども、それは娘にはわからない。恐怖心でわからないのではなく、言った言葉そのものの音がわからない。

「お前は誰だい、あっちへ行っておいで、誰にことわってここへ来たの、あっちへ行っておいで――」

娘は叱りながら、扉の方をさして、立退きを命ずるほどの勇気がある。

そこで大の男がまたチイチイ、パアパアいう。けれども、何のことだかそれが聞き取れない。