Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
といって、彼はそこを歩き出してしまいました。
「まあ――ひどい人」
女の驚愕をあとにして、兵馬は以前の通り悠々閑々たる足どりで、両腕を胸に組んで歩き出します。日本アルプスの大屏風を背景にして、松本平を前に望むところ――孤影飄々として歩み行くあとを、女が追いかけました。
「まあ、片柳様、あなたはほんとうに、わたしを打捨っておいでなさるのですか」
兵馬はそれに答えずして、フラフラと歩いて行きます。片柳とは宇津木の変名。
「あんまり、ひどい」
女は追いかけて、追いすがりました。
「それでは、あなた、約束が違やしませんか」
「約束とは?」
「わたしを救い出して下さる、あなたのお約束じゃありませんか」
「救い出す――いつ、わたしが、そんなことを言いましたか」
「あら、また、あんなことをおっしゃって……あなたをお力にすればこそ、こうして、わたしは、逃げ出して来たんじゃありませんか」
「人をたより過ぎてはいけません、拙者は人にたよられるほどの人間ではありません、人にたよりたいくらいの人間ですよ」
「では、わたしというものを、どうして下さるの……」
「浅間の、もとの主人まで送り届けるだけのことはします」