Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme

Aozora Bunko

それですから、与八はそこに自分の耳を疑いました。ははあ、これは自分の空耳だな、犬が吠えて、非常が暗示されたものだから、疑心暗人というようなわけだろう。しかし、戸があいたには確かにあいた。戸があいて、そうして同時に締められるには確かに締められたはずだから、どうもあきらめきれないで、立ちあがってから再び、小屋の隅々までも見廻して、

「誰だい、誰かへえって来たのかね」

どうも、立去り兼ねるものがある。

「待てよ」

そこで与八は提灯に火をうつして、裏の戸口のところへ行って、仔細に、戸と、その板の間のあたりとを、提灯の光で照らして見ました。

それは争われない。尋常の板の間ならば何でもないことですけれど、水車小屋の板の間ですから、粉と糠で、霜を置いたようにいっぱいに塗られてあるところですから、そこに手足の指のあとと、着物で掃かれた粉末の飛散のなごりをとどめないというわけにはゆきません。

「いる、いる、たしかにこん中に、人がいるに違えねえだ」

と与八が声を立てた時、後ろから与八の首へ、すっと一筋の縄が巻きつきました。

その縄に巻かれると、大力の与八が、もろくも囲炉裏のそばまで引き戻されてしまいました。