Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
しかし弁信の立っている地点は、屋外であることに間違いありません――絶叫してみたところで、そうは容易く人の耳に触れるほどの距離ではないのであります。まして弁信の声は、怨むが如く、泣くが如く、憂うるが如く、教うるが如き低音でありました。一向に返事のないことを予期して、そうして弁信が、おもむろに続けました。
「お嬢様、あなたが、むらむらと瞋恚の炎を燃やして、身も、世もあられず、お怒りになるそのお心が、離れていても、ぴたりと私の胸に響いて参ります。あなたの胸に燃やしておいでになる憤怒のほのおが、遠く私の魂をも焼くのでございます。人間の煩悩妄想のうち、憤怒の一念ほど、人の魂を焼き亡ぼす力のあるものはございませぬ。その怖ろしい力のために、海の潮が満引をするように、あなたのお心のうちが、日夜に動揺致しますのを見るにつけ、どうぞして、そのお腹立を和らげ、そのお憤りの心をしずめてお上げ申したいと、思わぬことはございません」
と言いながら、弁信はソロソロと歩みはじめました。
「あ、いけません、それが悪うございます、それですから、あなたのその憤怒の心に油が加わるばかりでございます、消えるどころではない、いよいよ燃え上るばかりでございます、そういうことをなさるから、それで……あなたの身と、魂が、ジリジリと燃焼して参り、やがてそれが、