Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
ここで、もし弁信の眼が見えて、その鋭敏な頭脳に、火と、煙の色とが映って来たなら、直ぐにそれによって、家屋の新旧と、建築の大小を判断して、これは誰の住居だと推定してしまったでしょうが、この場合、そこまでの判断を強うるのは酷です。
そうして、不自由のうちにもできる限りの用心と、速度とを以て、非常の方に急いで行きますと、その行手に当って、また一つのものを感得しました。
まさに、こちらへ向って走って来る人がある。その人は一人である。たった一人で、自分と向い合って走り来る人があることはまぎれもないと思いました。
おお、そうそう、その人の荒い、せききった息づかいさえ、この胸に響き渡るではないか。
三十一
そこで弁信が立ちどまっていると、走り来って、ほとんどぶっつかろうとして、危うく残して避けたその人が、
「まあ、あなたは、弁信さんじゃないの」
「そういうあなたは、お嬢様でございましたね」
「あ、なんだって弁信さん、今時分、こんなところを一人歩きをしているのです」
「それは、私から、あなたにお尋ねしたいところなのです、あなたこそ、どうして、今時分、こんなところへ、お一人でおいでになりましたのですか」