Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme

Aozora Bunko

「エエ、わたしはね……逃げて来たのよ」

「火事でございますね」

「エエ」

「火事は、お屋敷うちには違いございませんが、どなたかのお住居ですか、それとも納屋か、厩か、土蔵か、物置かでございましたか」

「あのね、弁信さん、火事は本宅なのよ」

「御本宅――」

「エエ、そうして、わたしの屋敷へも移るかも知れない、あの火の色をごらん」

「それは大変でございます、それほどの大変に、どうして、あなた様だけがお一人で、こっちの方へ逃げておいでになったのですか、あとのお方には、お怪我はありませんか」

「それは知らない、わたしは怖いから、わたしだけが逃げて来ました」

そういって、お銀様は立ちどまったままで、後ろを顧みて、竹の藪蔭から高くあがる火竜の勢いと、その火の子をながめて、ホッと吐息をついた時、弁信の耳には、それが早鐘のように聞え、その口が、耳までさけているように見えましたものですから、

「ああ、お嬢様、あなたは怖ろしいことをなさいましたね」

「ええ」

「あなたは、いけません、それだから、私が怖れました、ああ、今や、その怖れが本物になりました」

「何を言ってるの、弁信さん」

「お嬢様、あなたこそ、何を言っていらっしゃるのです」