Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 368.567 Zeichen · 720 Bildschirme
申し忘れたが、この一室にも、やはり角行燈の一基が、炬燵の彼方に物わびしく控えていて、何か話しかければ物を言いたそうに、話しかけないでいれば、先方から物を言いたそうに、しょんぼりと控えていることであります。
尋常ならば、その物欲しげな、ぽっかりとあいた口へ火が入って、待ってましたといわぬばかり、ぽっかりと明るくなる時分なのですが、自分の存在にさえ無頓着なこの室の主人が、行燈の存在などに、かまっていられるはずがありません。
冷遇せられたる行燈――これもまた天下にみじめなものの一つであります。清少納言は、すさまじきものの中に「火おこさぬ火桶」を数えているが、夕暮になって火の入らぬ行燈は、それよりも一層、すさまじいものかも知れません。
その、すさまじい行燈でさえが、無聊と、冷遇と、閑却と、無視との間に、何か一応の怨言をさしはさんでみようとして、それで何を恐れてか、それを言い煩うているほどに荒涼なこの一室。つまり、本来ならば、行燈そのものが化けて出そうなこの夕暮に、御当物が化けそこのうて、身動きもできないで、しょんぼりとすくんでいるこの笑止さが、話にも、絵にもならないのです。