Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme

Aozora Bunko

「かってえ坊!」

おそらくこれが悪罵の頂上でしょう、馬鹿と言い、畜生と言い、阿魔と言い、いずれにしても人に快感を与えるものではない、他を辱しめると共に、自らを辱しめずには置かない非紳士的の悪態ではあるけれども、それは尋常人も、どうかすると沸騰的に使用することもあるが、かってえ坊に至っては――もう頂上であり、極度であって、折助、夜鷹の類といえども、滅多に口にすることを恥づる冒涜の言を、米友が弄しました。弄したのではない、この際の、彼としての憎悪と、忌避と、憤怒とを最大級に表現する言葉としては、これよりほかに見出せなかったのでしょう。

そうして、ぐっと炉辺に仁王立ちになって、杖槍を八相の形に構えました。その形相、米友のことだから、仁王立ちとはいうものの寸が足りない。今し、また燃えさかった炉火で見ると、赤々と照らされた黒光りの肌と、忿怒の形相、それは宮本武蔵が刻んだという肥後の国、岩戸山霊巌洞の不動そっくりの形です。

三十四

室内はこうも張りきった怒罵、悪言の真最中であるにかかわらず、ちょうどこの前後の時、一つの生ぬるい、だらしのない叫び声が、思いがけない方角から起ったのは――