Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme
ていると見て差支えない、それを一歩も譲ろうとさえしないのです。聴覚の全然喪失した不具の人でない以上、たしかにこちらに対して寸毫も好意を持っていないものの態度、しかも、篤と闇を透して見れば、覆面をして長い二つの、触らば斬るものをさして突立っているのですから、無気味ということの以上を通り越して、害意もしくは殺意をさしはさんだ悪人と見るのが至当なのです。しかるにその前を、一応の挨拶だけで平気で子供を連れて通り抜けようとするのは、毒蛇の口へ身を運び入れるのと同様の振舞なのであります。
しかも母の方は女のことであり、子は道中差にしては長いのを一本差しているにはいるが、これとても通常の旅の用心で、それ以上に二人には、なんらの武装というべきほどのものが施されてあるのではありません。
しかし、無心というものの境涯こそは、あらゆる無気味に超越すると見え、この母と子は、すらすらと、この危険きわまる存在物の立ちはだかりの前を通り過ぎて、極めて安祥として二三間向うへ離れますと、
「どこへ行くのです?」
この時、物静かに、はじめて発音したのは、こちらの無気味きわまる黒い姿の存在物でありました。