Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme

Aozora Bunko

然るに今晩のことは、まるっきり違う。お雪ちゃんを介抱すべく誰もいやしない。それはそのはずで、今のさきまで元気でいた若いお雪ちゃんのことだから、誰も急変を予想しているはずのものはないのに、突発的にこの急変なのです。米友といえども全く周章狼狽せざるを得ません。

周章狼狽は極めてはいるけれども、全く失神迷乱しているわけではない。その点に於ては寧ろ相生町の時の、天地が目の前ででんぐり返って自分の立つところ、居るところがわからなくなったとは違って、何が何だか事の順序を見きわめるだけの余裕はあったのです。

まずあの炉辺から、自在と鉄瓶とを突破して、一気にこの室へはせつけしめられた異常というのは、この室から起ったところのお雪ちゃんの異様なる叫び――ではない、唸り声がもとなのでありました。その一種異様なる唸り声を聞きつけると、米友が例の早業で、一気にここへはせつけて来ての仕事が、前いう通り、寝ている蒲団の中からお雪ちゃんの身体を引きずり起して、両方の腕で掻抱いて、むやみにゆすぶり立てることでありました。そうして続けさまにその名を呼んで、まず正気を回復せしめて、事の理由をたずね問わんとするものでありました。