Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme
六十
これより先、今宵のこの二人の水入らずの会話と討論会が酣わなる時分から、この館の例の松の大木の根方に彳んで、ひそかにそれを立聞きしていた者がありました。
それは最初から立聞きに来た目的ではなく、ここを訪れようとして偶然、内では水入らずの会話と討論とが酣わであることに気がつくと、つい無遠慮にもおとない兼ね、そうかといって、引返すのも残念なように見えて、ついつい松の根方に彳んでしまったものとして受取れる。自然、そうしている以上は立聞くつもりでなくっても、おのずから内なる人の会話と討論とは、手にとるように聞き取れるのです。
内なる水入らずの二人も、会話と討論の気合がよく合うものですから、我を忘れて昂奮もすれば、躍起ともなり、また笑い溶かしたり、笑いくずしたりして、たいそうたあいない会話と討論ぶりが、いよいよ酣わになるばかりでありました。
この水入らずの酣わなる会談が、もし相手次第では、ずいぶん聞捨てにならないほど、人の嫉妬に似た心理作用を捲き起すかも知れないが、この話題の二人の人格に格段の異色があるところから、誰が聞いていても、その熱心ぶりにこそ興を催せ、これに嫉妬だの、艶羨だのというに似た感情を起させることは、万無いのでありました。