Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme

Aozora Bunko

そればかりではない、あのたっぷりしたお内儀さんを自分のものとして、家庭を楽しむことができるのだ。この旦那様さえなければ、この旦那様をさえないものにすれば……幸いここは甲斐と信濃の山路の奥、いま降り出した烈しい夕立、只さえ人通りのないところを、前後に全く見ている者はない、天道様さえこの豪雨で姿を隠している、ここに脇差がある、旅の用意の道中差、家を出る時、わたしは用心のために研いで置いた、旦那はこの通りよく眠っている、これで一突き、それで万事がきまる、もし間違って、少しは騒がれてもこの場合、この雨――そうして、後ろは何千丈の谷底だ、死骸をあれへ突き落してしまえば、あとかたもなくなる、もし、見つけられても盗賊追剥の災難といえばそれでも済む――ああ、お内儀さんの姿が目の前に浮んで来た、あのたっぷりしたお内儀さんが、にっこり笑って、おお、そうそう、お前の思い通り、一思いにそうなさい、そうそう臆病になっちゃいけない、強い心で……と言ってお内儀さんが手を添えて下さる、もう我慢ができない、決心した!」

こう思うと若い番頭は、急に物狂わしくなり、わななく手元で脇差を取ると早くも鞘を払い、いきなり主人の身辺に寄ると、後ろに悪魔がいて手伝いでもするかの如く、すごい勢いで、主人の咽喉をめがけて、その脇差を柄も通れと突き立てまし