Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme

Aozora Bunko

と前の谷を覗き込むと、その拍子に与次郎はハッと驚いた。今まで見たことのない手白猿をはじめて見た。

それは、全く手首から先の真白い大猿で、すぐ下の岩の上からじっと与次郎を見つめていた。なんぼたっても逃げようともしないので、与次郎は不思議に思ったが、

「こりゃ天の助けずら」

と喜んで、その後ろへ手を廻し、鉄砲を取り直すが早いか、しっかりと狙いを定めた。けれども猿はまだ逃げない。与次郎はますます喜んで、いまにも鉄砲をぶっぱなそうとした。すると何思ったか与次郎は、むしょうに鉄砲をガラリと投げ出した。猿は動かなかったはずで、赤ん坊を片手で抱いて、片手では一生懸命に与次郎を拝んでいたのだった。

生れて間もない赤ん坊が、しきりと母親の胸に頭をすりつけ乳房を探している様を見ると、与次郎はかわいそうでならなかったが、

「せっかく、こんないにして、めっけとうに、今ここで逃いては――」

と気を取り直し、また鉄砲を肩につけた。猿はじっとこっちを向いて、なおも一生懸命に拝んでいる。与次郎はたまらなくなって、また鉄砲を投げ出した。

ちょうど与次郎の家にも、生れて間もない赤ん坊があった。