Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme
自分ながら落着いたつもりが、まだ血迷っていた。向きをかえたつもりだが、実はもう一ぺん廻り過ごして同じ方向に向いちまったか。あわて者が馬へ逆さに乗って尻尾を見て、「おやこの馬には頭がねえ」と言ったが、乗り直して頭を見て、「尻尾もねえ」と言ったという笑い噺がある。そうでなければ大きな鏡仕掛で、あちらの幻像を、こちらへがんどう返しにうつし取ったものと見なければならないが、事実上、米友がどちらを向いて見ても、両岸が同じ光景だものですから、一時、どうしても、そこに馬の口を取りながら、立ちすくみの姿勢をとらざるを得ませんでした。
「わからねえ。わからねえ奴等だ」
それは、馬が駈けて行く方が用心するのは当然であるとしても、その用心か惰力かなにかで文句を言い、石の一つも投げてみようという手ずさみは、まあわかっているが、もうこの通り、馬も取鎮めてしまって、そうして穏かに曳いて帰ろうてえのに、その引返した方の奴が、悪口を言ってこっちへ石を投げかけるてえのは、わからねえ理窟じゃねえか。
こういう人気の土地か知らねえが――こんなことは初めてだ、一匹の馬のために、まあ、見るがいい、後から後からとあの人出は、村方総出だ。