Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠19
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠19 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 319.771 Zeichen · 617 Bildschirme
ありました。
五十二
神尾主膳が閑居してなす善か不善か知らないが、その楽しむところのものに書道がある、とは前に書きました。また、彼が何の発心か、近ごろになって著述の筆をとりはじめて、自叙伝めいたものを書き出したということも前に書きました。
それは、ほんの筆のすさびに過ぎなかったのを、この数日、非常なる熱心を以て、机に向って筆を走らせ出しました。今までは道楽としての著述であるが、最近は少なくとも生命を打込んでの筆の精進です。書きつつあるところに、何かしら憂憤の情を発して、我ながら激昂することもあれば、長歎息することもあるし、それほど丹精を打込んで書くからは、彼はこの書を名残りとし、生前の遺稿として、記念にとどめたいほどの意気組みが、ありありと見るべきものです。
主膳のこのごろは、たしかに激するところがあるのです。著述の興味が進むということも、半ばその激情にかられて筆を進めるからです。かくて、ともかくも、神尾主膳が殿様芸ではなく、不朽――というほどでなくとも、著作の真意義に触れるような心の行き方に進みつつあるのも、不思議の一つでないということはありません。