Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠19
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠19 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 319.771 Zeichen · 617 Bildschirme
鶏の声々に引きつづいて、つい近い庭先で、一声のすさまじい犬の吠ゆる声を聞きました。鶏の鳴き声は、ちゃぼの鳴き声でありましたが、犬の吠え方は、ついぞ聞いたことのない、鋭くして強い吠え方でありました。鶏犬の声は平和のシムボルでありますけれど、鶏は時を作るものだが、犬は時間を知らせるものではありません。不吉な夜鳴きでない限り、鶏の鳴く音は常態でありますけれども、犬の吠ゆるは非常態でなければならない。
そこで、この屋敷に相当逞しい犬が飼育されていることもわかり、その畜犬が物に触れて、いま声を立てたのだということもわかりました。犬が物に感じたというその物は、人間以外の何物でもありますまい。つまり、不時に、思いがけぬ人の気配を感じたればこそ、畜犬が、主家の防備と、自己保存の本能のために叫びを立てたに相違ない。それを勘の強い弁信が聞き洩らすはずはありません。
「犬がおりますな」
「ええ、強い犬がいます」
「誰か参りました」
「不破さんでしょう」
「いいえ、別の人です」
つついて、犬が立てつづけに吠える、その声は尋常の犬と違って、腹から出る音声を持っていて、この座の人の丹田にこたえるのみならず、おそらく、この静かな時、十町を離れたところでらくに聞き取れるほどの音量が、超感覚の弁信の耳に、いよいよこたえないはずはありません。