Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠19

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠19 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 319.771 Zeichen · 617 Bildschirme

Aozora Bunko

「夜分、ある時刻になりますと、あのお台所のあたりで、男女の悲しみ泣く声がすると、世間の噂でござりまする」

「ああ、そのことならば……」

そこを出る前に、たしかに経験して来たことです。

男と女のすすり泣きの合唱があった。その合泣が、自分の部屋の一隅で起ったのか、柱の中でしているのか、或いは天井裏でしているのか、見当に苦しんだ覚えが、急によみがえって来ました。尼の問うのは、たしかにそのことに相違ない。

してみると、あの忙しい男女のすすり泣きは、自分が経験した妄想だけではない、この尼さえも知っている。程遠いところに住む人さえ知っているくらいだから、もはや、一般の常識化して、世間の口の端に上っているに相違ない。

竜之助の合点が参った様子を見て取って、尼も安心したらしく、

「夜分、ある時になりますると、必ず、若い男女の悲しみの泣き声が、いずれよりか聞えて参りまして、その泣き声がやみますると、暗い中から白い手が出て参り、柱から壁、長押をずっと撫で廻すそうにござりまするが、それは真実でござりまするか」

待てよ、男女の悲泣する声だけは、たしかに聞いて出て来たが、その白い手は見なかった。