Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠2
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠2 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.601 Zeichen · 387 Bildschirme
あぶない、その手を渡って来て肩先へ噛みついた――七兵衛が少しく身をかわしたから、ムクの歯は七兵衛の肉へは透らないで、七兵衛の合羽の上を食い破ってしまいました。
「こん畜生、狂犬だな」
七兵衛は合羽へ食いついた犬の首を抱えるようにして、力任せに後ろへ取って捨てる、痩せて弱っていた猛犬は七兵衛に後ろへ取って捨てられてと倒れたが、クルリと起き上って、二三歩退いて両足を前に合せて、そうしてじっと七兵衛の面を睨んでウォーと唸りつけていました。
その形相を見て七兵衛は、この犬が並一通りの狂犬ではないことを知りました。
「ムクだ、ムクだ、ムクが出たぞ、どこから出て来たのだろう」
早くも土地の人が騒ぎ立てました。
先日、古市の町を騒がしたムク犬は、あれっきりどこへ行ったか行方知れずになってしまったのを、ここで偶然に姿を現して、また土地の人を騒がせました。
「どこにいたんだろう、あの犬はありゃ、尾上山の後ろに隠れていたんだぜ」
「痩せてるな、もとは熊のように肥っていたが今は狼みたようだ」
「あの旅人は、ありゃ何だ、見慣れない人だが、気の毒だ、お役所へ沙汰をしようじゃないか、あん畜生はホントに狂犬になったんで通る人の見さかいもなく、ああして噛みつくんだ、うっかり傍へ寄ると危ねえ、早くお役所へ沙汰をしようじゃないか」