Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠2

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠2 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.601 Zeichen · 387 Bildschirme

Aozora Bunko

お君はその中へ入って、風呂敷包を抛り出してほっと息をついたのでありました。

「お母さん、お母さん」

お君は悲しさと懐しさで、母を慕うて声をあげた時に、仮寝の夢が破れました。夢が破れて見ると、いつのまにか日は暮れかかって、祠の外から、西の海へ沈む夕焼けが赤々として本堂を洩れて、格子の透間からお君の面にまで射し込んでいるので、夢よりはいっそう切ないわが身に返りました。

旅寝の疲れで夢を見て、母を恋い慕うて覚めて見れば、身はひとり寝の祠の中で、外は日暮れの物淋しい夕焼けの色です。

眼が覚めてもお君は、もうここを立ち去る気にはなりませんでした。荒涼たる心の中、さすらい尽した魂に射し込む夕焼けの色は、西の空に故郷ありと思う身にとって、死んでその安楽の故郷に帰れと教えぬばかりの色でありました。

鳥は古巣へ帰れども

行きて帰らぬ死出の旅

今まで無心で歌っていた歌。

「ああ、死んでしまおう」

お君はここに初めて死の決心を起しました。

死の決心がひとたび定まったために、生の重荷がことごとく振い落されてしまいました。

お君は祠の隅を見廻して破れた太鼓に眼をつけて、それを梁の下まで転がして来ました。