Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠7 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 242.044 Zeichen · 477 Bildschirme
駕籠屋は、いよいよ解せぬ色で、その忠告を聞き流していたが、なあーに、こんな雨上りの月夜に、そう急に霧が捲くことがあるものかと、たかをくくってそれにはあえて驚きもしなかったが、やがて、
「あッ!」
と驚かされたのは、いま立去った旅人の挙動です。つい、たった今、そこで煙草の火をつけて、霧の起るべき予告をしておいて立去った旅人は、早や眼を上げて見ると、二十八丁の頂に、豆のような形を消して行くところです。
「今の人が、もうあすこまで行った」
「あッ!」
と若いのが青くなったのは、今も今の話、天狗様の夜歩きを、この男は生涯に二度見たからです。二人の見合わせた面は真蒼です。
「さあ、いけねえ」
慄えがとまらないでいる。この時遅しとでもいおうか、谷と沢の間から、徐々として白いものが流れ出すと、峠や峰の横合いからも、ひたひたとその白いものが流れ出して来るのです。
気のついた時分には、月の光も隠れておりました。
「さあ大変! 天狗様のお告げ通りになったぞ」
彼等は、いま立去った旅人を人間とは見なかったように、いま捲き起った霧を、単純な天変とは見ることができないで、戦きはじめました。