Japanische Klassiker mit Furigana
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おおさかをあるく
大阪を歩く
直木 三十五
Lesen Sie 大阪を歩く (おおさかをあるく) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.964 Zeichen · 65 Bildschirme
私が、大阪の芝居を見た時分、私の家庭のような貧乏な連中にとっては年中行事の一つであった。私の母親は、前の晩に髪を結って、重箱を造っていた。そして、芝居の中で重箱以外のいろいろの物を買って、食べていた。
この風俗は後年にも、しばしば御霊文楽座に於て、見受けた所であるが、これは猶大阪人の楽しみの一つであるらしい。東京の女性は椅子席で芝居のみを見て、幕間に食堂で食べ、廊下で、容色と衣裳とを見せる事に、すぐ慣れたが、大阪の女は、もし、松竹が、悉く、芝居を椅子席にしたなら、恐らく、不平を洩らして、拗ねるにちがい無い。
東京の女は「西洋は、こうだ」というと「そう」と、云って食べたいのを我慢するが、大阪の女は「芝居で物を食べたら、何んでいきまへんね」と、突っかかるにきまっている。私は、芝居を見乍ら、食べ、飲み、握手し、接吻することを、決して下等だとは、思わないが、こうした東京の女は、直ぐ新らしさを受入れ、大阪の女は旧風を固守する事に、可成り文化の進歩に、遅速が生じて来たと思っている。
直ぐ、ハイカラ風を受入れる、受入れるに就いての是非は別として、何程かの後に東京風が、大阪へ侵入して来る事だけは確かである。