Japanische Klassiker mit Furigana
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てんぽうのひこうじゅつ
天保の飛行術
野村 胡堂
Lesen Sie 天保の飛行術 (てんぽうのひこうじゅつ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.024 Zeichen · 28 Bildschirme
清作は淋しい笑いに紛らせるのでした。
「矢張り、私が思った通りの御身分ねエ」
「――――」
二人は暫く黙り込んでしまいました。
「御前平までは此処からは峰一つ越しただけ、多分手紙にも及ばないでしょう、でも万一私より先にその年寄にお逢いでしたら、こんな女が――(何も彼もいけない、どんな目に逢わされるか解らないから、隙があったら山越えをして、飛騨か信濃へ逃げるように――)と伝えて下さい、あれ、もう誰か登って来る様子――」
「――――」
お通は清作に山手形を握らせて、その手にすがり乍ら続けるのでした。
「強いことを言っても、私は矢張り弱い女ですもの、命までも狙われていると解ると、ツイこう頼母しい方の手に縋りたくなります。笑わないで下さい、――これから一世一代の大芝居が始まりますよ、あれあれ悪形が揃って、こっちへやって来る、――あなたは、姿を隠して、黙って見ていて下さい、どんな事があっても」
「私は何事も黙って見るのが役目だ、どんな事があっても手出しはしません」
「では、清作さん」
「お通さん」
二人はそのまま別れました、清作は岩の蔭へ、――お通は道の真ん中に。
谷底へ