Japanische Klassiker mit Furigana
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てんしゅものがたり
天守物語
泉 鏡花
Lesen Sie 天守物語 (てんしゅものがたり) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.593 Zeichen · 42 Bildschirme
夫人 ああ、優しいそのお言葉で、なお帰したくなくなった。(袂を取る。)
図書 (屹として袖を払う)強いて、たって、お帰しなくば、お抵抗をいたします。
夫人 (微笑み)あの私に。
図書 おんでもない事。
夫人 まあ、お勇ましい、凜々しい。あの、獅子に似た若いお方、お名が聞きたい。
図書 夢のような仰せなれば、名のありなしも覚えませぬが、姫川図書之助と申します。
夫人 可懐い、嬉しいお名、忘れません。
図書 以後、お天守下の往かいには、誓って礼拝をいたします。――御免。(衝と立つ。)
夫人 ああ、図書様、しばらく。
図書 是非もない、所詮活けてはお帰しない掟なのでございますか。
夫人 ほほほ、播磨守の家中とは違います。ここは私の心一つ、掟なぞは何にもない。
図書 それを、お呼留め遊ばしたは。
夫人 おはなむけがあるのでござんす。――人間は疑深い。卑怯な、臆病な、我儘な、殿様などはなおの事。貴方がこの五重へ上って、この私を認めたことを誰もほんとうにはせぬであろう。清い、爽かな貴方のために、記念の品をあげましょう。(静に以前の兜を取る)――これを、その記念にお持ちなさいまし。
図書 存じも寄らぬ御たまもの、姫君に向い、御辞退はかえって失礼。