Japanische Klassiker mit Furigana
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かのうせいのぶんがく
夫婦善哉
織田 作之助
Lesen Sie 夫婦善哉 (かのうせいのぶんがく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.834 Zeichen · 94 Bildschirme
しかし、たいして繁昌りもしなかった……。
繁昌らぬのも道理だ。家伝薬だというわけではなし、名前が通っているというわけでもなし、正直なところ効くか効かぬかわからぬような素人手製の丸薬を、裏長屋同然の場所で売っていて誰が買いに来るものか。
無論、お前もそのことは百も承知してか、ともかく宣伝が第一だと、嘘八百の文句を並べたチラシを配るなど、まあ勢一杯に努めていたというわけだが、そのチラシ自体がわるかった。
おれもお前に貰って、見たが、版がわるい上に、紙も子供の手習いにも使えぬ粗末なもので、むろん黒の一色刷り、浪花節の寄席の広告でも、もう少し気の利いたのを使うと思われるような代物だった。余程熱心に読まねば判読しがたい、という点も勘定に入れて、全くのところ、まるで薬の信用をみずから落しているのも同然だった。
おまけに、丸薬をしかるべく包装するわけでもなく、夜店で売る「一つまけとけ」の飴玉みたいに、白い菓子袋に入れて、……それでは売れぬのも無理はなかった。
そんな情けない状態ゆえ、その時お前がおれに出会ったのは、いわば地獄に仏全くお前にとっては、運の神だといってもよいくらいだった。