Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

うしなわれたはんしん

失われた半身

豊島 与志雄

Lesen Sie 失われた半身 (うしなわれたはんしん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.545 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

「あたし、あすこのお鮨屋にはすっかり御無沙汰しちゃった。」

「どうして?」

それには答えず、おれの方をじっと見た。

「あなたは?」

「僕も行かない。今日久しぶりだ。」

顔見合せて、しぜんに、二人とも頬笑んだ。おれは彼女に甘えたい気持ちになってゆき、それが自分でも楽しかったが、どういうものか、或る冷い障壁が彼女のうちに感ぜられた。それならそれでもよい、とおれは思った。二人の肉体が愛し合ってから、二人ともあの鮨屋にはあまり行かなくなった。そのことに何の意味があるものか。

「もうだいぶ召し上ってるようね。」

「うむ。ウイスキーと、焼酎だ。やはり日本酒がいちばんいい。」

彼女は銚子を取って、器用な手付きで酌をしたが、ふいに、おれの顔をじっと見つめた。

「あなたは、今日はなんだか冷いわね。」

忘れていた。おれは彼女の肩を抱いて、キスしてやった。だが、彼女の方も冷淡のようだ。おれは苛立たしい思いだった。昼間の虚脱感が戻ってくる。そして今、おれには性慾がないのだ。あなたの情熱がうれしい、と囁いて、彼女はしばしば蛇のようにおれの体をしめあげたが、然し、獣ではあるまいし、常住不断に性慾を、いや妥協して、情熱を持ち続けられるものではあるまい。