Japanische Klassiker mit Furigana
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しっさくき
失策記
豊島 与志雄
Lesen Sie 失策記 (しっさくき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.228 Zeichen · 9 Bildschirme
こうなると、四角な卓子の対角線を通じての対坐だから、人間的な話が出来ようわけはない。――どうも日本座敷はあがきが取れない、せめて、円い卓子を置いた方が便利だ……とそんなことを、私は四角な卓子の対角線の一方で考えながら、黙りこんでしまい、そして対角線の先端に坐っているのは、すっかり人間味を失った単なる儀礼の案山子にすぎなくなった。
こうなったらもうおしまいで、こちらは不愉快に黙りこむの一手だし、先方は更に鞠躬如と、雨だの風だの電車だのバスだの――そして漸く、色紙短冊の御揮毫をときた。
――そうしたことで、私はすっかり気を腐らしてしまった。
気は腐ったが、これも用件なので、伯父の家を訪ねていった。
ひどく謹厳な老人で、酔えば仕舞の一手も踊ろうという粋人だが、ふだんは茶の間の長火鉢の前でも膝をくずさず、十徳姿で短い白髯をなでている。子供もなく、金婚式にま近い老妻と二人きりで、若い時からの道楽の書道が役に立って、近所の娘子供たちに書道の稽古を授けている。謡曲に造詣深いところから、絹地に金泥で扇面を描き、その扇面に得意の隷書体で、「謡曲十五徳――不行知名所、在旅得知者……。