Japanische Klassiker mit Furigana
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しっちょうき
失蝶記
山本 周五郎
Lesen Sie 失蝶記 (しっちょうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.072 Zeichen · 44 Bildschirme
重職がたの一部は、もちろん承知だったが、これも直接にはかかわりを持たず、見て見ぬふりをしていたのですが、これも仙台藩の耳目をおそれたからで、わが藩がいかに左右の勢力の中でもがいていたかという、例証の一つだと思うのです。
その日、磯部へゆくまえに、私は杉永とこんな話をしました。
「どうしてあの人と祝言をしないんだ」と私が訊きました、「婚約してからもうあしかけ三年くらいになるじゃないか」
彼は口笛でも吹くように唇をまるくしました。なにか云いよどむときの、少年時代からの癖で、そうするとひどく子供っぽい顔になるのです。
「親たちにもそれを云われるんだが」と彼は答えました、「いまはそういう気持になれないんだ」
「なにか故障でもあるのか」
「故障というわけじゃない」こう云って暫く口をつぐみ、それから私の眼を避けるようにしながら続けました、「――こんな時代だし、結婚をいそいで、かず子に不幸なめをみせたくないんだ」
私は黙って杉永を見返しました。
「このあいだから考えていたことなんだが」と彼はゆっくり云いました、「おれはいっそ京へのぼろうかと思う」
「京へいってなにをする」