Japanische Klassiker mit Furigana
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しっちょうき
失蝶記
山本 周五郎
Lesen Sie 失蝶記 (しっちょうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.072 Zeichen · 44 Bildschirme
私は大砲の火口から煙が立っているのを見、こちらへ走って来る二人の、灰色にひきつった顔を見ました。失敗したのだ、このままでは砲身が破裂してしまう、と思いました。
――あの砲を失うことはできない。
そう思いながら、私はもう走りだしていたのです。それを手に入れるまでの苦心と、再び手に入れることの困難さとが私をそうさせたのでしょう。
「よせ、谷川」と杉永の叫ぶのが聞えました、「危ない、戻れ、戻れ」
私は火口の火を消すつもりだったのでしょう。はっきりそう思ったわけではない、ただもうその砲を失ってはならないという気持で、火口から立ちのぼる薄い煙をみつめながら、けんめいに走り、もう一と足というところで、砂に足を取られて倒れました。
そのとき砲身が破裂したのです。どこに手違いがあったか、大砲そのものが粉砕してしまったので、原因はわかりません。私は倒れると同時に、躯ぜんたいを大きな板で殴られたように感じ、殆んど失神してしまいました。倒れなければ破片にやられて即死したことでしょう、幸い躯にけがはなかったが、両耳の聴力を失ってしまいました。
自分のことを語るのはいやなものです。