Japanische Klassiker mit Furigana
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きかいなはなし
奇怪な話
豊島 与志雄
Lesen Sie 奇怪な話 (きかいなはなし) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.130 Zeichen · 14 Bildschirme
それが俥の幌に、ばさーりばさーりと吹きつけてくる。いやな風だな、と思っているうちに、やがてその風が、ばかーばかーと怒鳴るのである。
彼は我慢した。風はなお、ばかーばかーと叫んでいく。それでも彼は我慢した。風の方はなお勢を得て、四方から彼の方へ吹きよせてきて、ばかーばかーと、怒鳴るのである。耳をふさいでもおっつかない。しっきりなしに怒鳴る。しまいに彼は辛抱しきれなくなって、ばかーと怒鳴り返してやった。風の方でばかーと怒鳴る。彼も思いきって、やたらに怒鳴り返してやった。
「それからです、私は暫く気が狂ってしまいました。あの時、耳の穴から狂気をすいこんで、口の穴から正気を吐き出してしまったんです。そして、その狂気を吐き出して、正気を吸い戻すのに、随分長くかかりました。」
じっと眼を据えてる彼の顔を、私は凝視したのだった。そして気がついてみると、煙草を吸うのもおかしなことだし、息をするのまでがおかしなことだ。おかしなことというものは、考えてみると、不安なことだ。なるほど、この都会の空気中には、狂気と正気とが、至る所に浮游しているかも知れない。そいつが、いつどこからどんな風に飛び込んでこないとも限らない。