Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選
野村 胡堂
Lesen Sie 奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.249 Zeichen · 62 Bildschirme
「お前が福寿院の境内でお君と会う約束のあったことを、誰か知っていたのか」
「誰も知ってるわけはありません、――それを知っている者があれば、あっしはお君を殺した疑いで縄なんか打たれずに済んだことでしょうが」
万次はことごとく萎れ返っております。これが筋彫の刺青などを見栄にして、やくざ者らしく肩肘を張っていたのが可笑しくなるくらいです。
「ほかにお君を怨んでいる者の心当りはないのか」
「伊賀井の御用人、竹林金吾という方が、ひどくお君を憎がっていたそうです」
「伊賀井様お屋敷内に、お君やお前が知っている方はないのか」
「お女中のお初さん、――まだ若い働きものですがね、お屋敷の内外を一人で切って廻して、よく買物や用達しに出るので、お君とも懇意にしていたようです」
万次から訊き出せるのはこんなことでした。これだけではまだ、万次の縄を解いてやるわけにもいきません。
植木屋の辰五郎の家は、新堀江町寄りの裏店で、平次が行った時は、まだ女房のお滝の死骸もそのまま、辰五郎は死んだ女房の床の前に、大胡坐をかいて茶碗酒を呷っているところでした。
ろくな親類もある筈はなく、町内付き合いもいい加減で、合長屋の月番の老爺が、お義理だけの顔を出して、へべれけの辰五郎のお守を、迷惑そうにやっているという、いかにも惨憺たる有様です。