Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おくのうみ

奥の海

久生 十蘭

Lesen Sie 奥の海 (おくのうみ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.005 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

「恋だとは思えないが、これが恋というものなのか。ひだるさより、いとしさが先に立つというのは、おかしなことだ」

首を振り振り、塩をなめて水を飲み、行灯の前に坐って、ねずみの番をしながら、とうとう夜を明かしてしまった。

米が足らないのは不作のせいで、廻米に依存している京都では、禁裡の入用さえ痩せ細っている次第だから、貧乏に愛想をつかして逃げだしたとは思えない。ぬる茶を一ぱい飲んだだけで役所へ出たが、切米手形の発出をあずかる割場の下役が用人部屋へ遊びにきて、むだ話のついでに、こんなことをいった。

「昨日、中納言の息女が見えて、おぬしの拝借米や御四季施代金の前借り、代渡し切手の裏判のことまで、くわしく調べて行った。京の女はこまかいそろばんをはじくというが、あんな女房を持っているとは、おうらやましいことだ」

詰りきった下士の台所を切りまわすには、亭主の内証を知っているほうが便利だろうが、まだ祝言もすまない長屋の青女房が、勘定割場まで差し出るのは、少々、念が入りすぎている。しっかり者とは知っているが、これには金十郎も、ちょっと脅えた。

どうしたのか、その夜も帰ってこない。