Japanische Klassiker mit Furigana
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じょよう
女妖
江戸川 乱歩
Lesen Sie 女妖 (じょよう) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.691 Zeichen · 20 Bildschirme
向うの汽船のマストの上の、白い雲の中に漂っている。西洋の名画の聖母像と似ているが、どこかちがう。もっと華やかでなまめかしい。情慾に光り輝いている。浩一はあの美しい女に呑まれたいと思った。鯨に呑まれるように、腹の中へ呑まれたいと思った。
ほんとうをいうと、彼は少年時代から、この幻想に憑かれていた。夢にもよく見た。中学校の集団旅行で、奈良の大仏を見たときには、恍惚として目がくらみそうになった。鎌倉の大仏はもっと実感的だった。あの体内へはいった時の気持が忘れられないで、ただそれだけのために、三度も四度も鎌倉へ行ったほどだ。あの胎内に住んでいられたら、どんなによかろうと思った。
「いよいよ、せっぱつまったなあ。自殺のほかはない」
浩一は、口に出して呟いて見た。温泉めぐりをしているあいだも、白粉の濃い丸まっちい女を抱いているときにも、彼は絶えず自殺のことを考えていた。その想念には何か甘い味があった。
立ち上がって、芝生のはずれの崕はなまで行って、じっと前の青黒い海を見つめていたが、飛びこむ気にはなれなかった。いよいよの土壇場までには、まだ少しあいだがあると思った。