Japanische Klassiker mit Furigana
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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
Lesen Sie 婦系図 (おんなけいず) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 172.760 Zeichen · 343 Bildschirme
艶やかな幌に、夜上りの澄渡った富士を透かして、燃立つばかりの鳥毛の蹴込み、友染の背当てした、高台細骨の車があった。
あの、音の冴えた、軽い車の軋る響きは……例のがお出掛けに違いない。昨日東京から帰った筈。それ、衣更えの姿を見よ、と小橋の上で留るやら、旦那を送り出して引込だばかりの奥から、わざわざ駈出すやら、刎釣瓶の手を休めるやら、女連が上も下も斉しく見る目を聳てたが、車は確に、軒に藤棚があって下を用水が流れる、火の番小屋と相角の、辻の帳場で、近頃塗替えて、島山の令夫人に乗初めをして頂く、と十日ばかり取って置きの逸物に違いないが――風呂敷包み一つ乗らない、空車を挽いて、車夫は被物なしに駈けるのであった。
ものの半時ばかり経つと、同じ腕車は、通の方から勢よく茶畑を走って、草深の町へ曳込んで来た。時に車上に居たものを、折から行違った土地の豆腐屋、八百屋、(のりはどうですね――)と売って通る女房などは、若竹座へ乗込んだ俳優だ、と思ったし、旦那が留守の、座敷から縁越に伸上ったり、玄関の衝立の蔭になって差覗いた奥様連は、千鳥座で金色夜叉を演るという新俳優の、あれは貫一に扮る誰かだ、と立騒いだ。