Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

Lesen Sie 嫁取婿取 (よめとりむことり) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.654 Zeichen · 175 Bildschirme

Aozora Bunko

と山下さんは免れ難い運命のように考えていた。かゝりつけのお医者さんは、

「又ですか? 今度は何方です?」

と訊きながら、気の毒そうな顔をして上り込んだものだった。子供が唯一の屈託だから騒ぎも大きい。熱が三日も続くと、山下さんは会社の仕事を其方退けにして、診察に立ち会う。

「何うでしょう? 大丈夫ですか?」

「流感ですよ」

「チブスや肺炎の徴候は見えませんか?」

と悪い方ばかり考える。山下家の子供は病みつくのも早いが、手当が早いから直るのも早い。医者は斯ういう患家が書き入れだ。その都度命拾いだと思って有難がられる。

或年の暮に山下夫人は、

「あなた、珍らしいことがございますのよ」

と手柄顔に注進した。

「何だい?」

「いつにもないことでございます」

「さあ。何だろう?」

「薬価が唯七円五十銭で済みました」

「ふうむ。然ういえばこの頃は病人の苦労がなくなったね。もうソロ/\病み抜けるんだろう」

「皆大きくなったからですわ」

「それもある。何にしても有難いことだ」

と山下さんは満足だった。薬価は家庭の暗さに正比例する。

末男の英彦君が尋常三年に進んだ頃から、お医者さんと略縁が切れた。