Japanische Klassiker mit Furigana
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こをうばう
子を奪う
豊島 与志雄
Lesen Sie 子を奪う (こをうばう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.292 Zeichen · 80 Bildschirme
そして常に一の疑問が最後まで残るのであった。兼子は誤った感傷に囚われてるのではないか? ということ。感傷が単に感傷として止まる間はまだよい。然しそれが生活の方向を指定するまでに、厳たる存在を取る時には……。
最後に木村博士の診断を受けた時、彼女は凡てに気兼ねでもするように、表の格子をそっと開き足音を竊んで、伏目がちに家へ帰ってきたのだった。やはり一種の病気だそうだというような事を、ごく簡単に答えたきり、幾代や彼の問いを明かに煩さがっていた。黙って考え込んでいる彼女の姿を、彼は幾度も茶の間に見かけた。
「そうしてると、お前の首はいつもよりなお細って見えるよ。」と彼は云った。然し、顔色がいつもよりなお蒼く見えるということは、口へは出さなかった。
「あらそう?」と彼女は答えて頭をもたげながら彼の方を見上げた。その眼には夢見るような柔かい濡いがあった。
彼は安心した。然しその晩に、彼女の眼は熱い黝ずんだ光を帯びた。そして木村博士の診断を良人と母とに残らずうち明けた。平素身体が比較的弱いのは、やはり子宮の内膜の病気が原因だった。その病気は、うっちゃっておいても別段差支えないとのことだった。