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Japanische Klassiker mit Furigana

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こをうばう

子を奪う

豊島 与志雄

Lesen Sie 子を奪う (こをうばう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.292 Zeichen · 80 Bildschirme

Aozora Bunko

そして手術すれば全愈する可能が多いし、手術しなければ不妊の可能が多いけれど、終局何れも可能に止まるとのことだった。――全愈の見込が確かでない手術なんかはしない方がいい、ということに皆の意見は一致した。大して差支えのない病気なら、身体を強くする方法は他にありそうだった。

何でもないことだ、と彼は思った。然し幾代と兼子とにとってはそうではなさそうだった。その晩兼子は長く眠れないでいるらしかった。夜中に彼はふと眼を覚した。兼子が声低く彼を呼んでいた。彼は大きく開いた眼で意味を尋ねた。彼女は云った。

「私、やはり手術をして貰いましょうか。」

「それもいいね。」と彼は答えた。「何なら僕がなお木村博士に相談してみようか。」

彼女は何とも云わなかった。そしてただまじまじと眼を見開いていた。頬の細そりした面長の顔が、薄暗い光りの中に浮きだして、静に枕の上に休らっていたが、底のない穴を思わせるような眼だけは、変に鋭く活いていた。そして時々瞬きをした。それをじっと見ていると、瞬きの毎に怪しい惑わしが伝わってきた。彼ははっきり眼を覚しながら、そのまま白けた眠りに落ちた。

其後も一度眼を覚して、なお眠らないでいる彼女の姿を見たような記憶を、彼は朝になって意識に浮べた。