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Japanische Klassiker mit Furigana

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こをうばう

子を奪う

豊島 与志雄

Lesen Sie 子を奪う (こをうばう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.292 Zeichen · 80 Bildschirme

Aozora Bunko

依子は次第に、「お母ちゃま」という言葉を口にしなくなった。それと同時に、「お母ちゃん」をも口にしなくなった。然しそれは言葉の上だけであった。彼女は前よりも屡々、玄関に飛び出したり庭の隅へつっ立ったりして、ぼんやり眼を見据えてることが多くなった。それがいつも夕方から晩へかけてだった。

そういうことが余り度重るので、もしやという疑念が彼に萠した。彼は隙を窺って、依子が玄関につっ立ってる時、いきなり表へ飛び出してみた。然しただ、閑静な通りが向うまで見渡せるだけで、敏子らしい姿にも見当らなかった。

所が、ある夕方――敏子が依子を連れてきた時のような、今にも雨になりそうな曇り日の、風もない妙に湿っぽい夕方だったが――兼子は、表に敏子らしい姿を見かけたと云った。彼はぎくりとした。二人ですぐに表へ出てみた。薄暗い通りには何等の人影もなかった。大きな犬がのそりのそり向うから歩いてきた。二人はその犬が通りすぎるまで佇んでいた。それから家の中にはいった。

「余り神経をやんではいけない。」と彼は云った。「お前までがそんな風になると、なお依子がいけなくなるばかりだ。」

「でもたしかに変ですよ。