Japanische Klassiker mit Furigana
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あんごこうだん
安吾巷談
Lesen Sie 安吾巷談 (あんごこうだん) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.016 Zeichen · 48 Bildschirme
男はカバンを持っていたのである。勘定を払う段に、カバンが失くなっているのに気がついた。いくらか酔いがさめかけたのである。しかしまだ全然呂律がまわらない。
「カバンが失くなったから払えない。払わんとはいわん。ぼくはこういう者です」
男は名刺をとりだしたが、ヨロけてフラフラ、ウイッといって前へのめりそうになったり、今喋っていることを明朝覚えているとは思われない。
お巡りさんは名刺と定期券を合せて調べたが、たしかに本人の名刺だ。
けれども女丈夫は承知しない。所持金がないと知りながら、今すぐ払えという激越な口吻だ。つまり上衣か何かカタにとりたてるコンタンらしい。巡査も呆れて、
「たった百円のことじゃないか」
と叱りつけたが、女はひるむどころか、
「じゃ、明日の何時に交番の前で払うと、お巡りさんが証人になって、責任をもって下さい」
と図々しいことを言いだした。勝手に責任を押しつけられてはお巡りさんも堪らないから、
「名刺を貰ってるんだから、信用したら、どうかね。ニセの名刺じゃないことが証明ずみなんだから。こちらの方も悪意があるわけじゃない。酔っ払ってカバンを失くしたために払えないことがハッキリしとるじゃないか」