Japanische Klassiker mit Furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.411 Zeichen · 285 Bildschirme
他に客も見えなかった。窓に近い食卓を選んで、三吉は椅子に腰掛けた。お雪も手袋を取って、よく働いた女らしい手を、白い食卓の布の上に置いた。
「ここですか、貴方の贔顧にしてる家は」
とお雪は言って、花瓶だの、鏡だの、古風な油絵の額だので飾ってある食堂の内を見廻した。彼女は又、玻璃窓の方へも立って行って、そこから見える町々の屋根などを眺めた。
白い上衣を着けたボオイが皿を運んで来た。三吉は匙を取上げながら、妻の顔を眺めて、
「どうだネ。お前の旧い友達で、誰か可羨しいような人が有るかネ。ホラ、黒縮緬の羽織を着て、一度お前の許へ訪ねて来た人が有ったろう。あの人も見違えるほどお婆さんに成ったネ」
「多勢子供が有るんですもの……」とお雪は思出したような眼付をして、スウプを吸った。
「旦那に仕送りするなんて言って、亜米利加へ稼ぎに行った人もどうしたかサ。そうかと思えば、旦那と子供を置いて、独りで某処へ行ってる人もある……妙な噂があるぜ、ああいう人がお前には好いのかネ」
「でも、あの人は感心な人です」
「そうかナア……」
ボオイが皿を取替えて行った。しばらく夫婦は黙って食った。