Japanische Klassiker mit Furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.748 Zeichen · 254 Bildschirme
せめて全額でないまでも、送金しようと思った。その為に、三吉は三月ばかり掛って漸く書き終った草稿を売ることにした。
「オイ、子供が酷く泣いてるぜ。そうして休んでいるなら、見ておやりよ」
「私だって疲れてるじゃ有りませんか――ああ、復た今夜も終宵泣かれるのかなあ。さあ、お黙りお黙り――母さんはもう知らないよ、そんなに泣くなら――」
こんな風に、夫婦の心が子供の泣声に奪われることは、毎晩のようであった。母の乳が止ってから、お房の激し易く、泣き易く成ったことは、一通りでない。それに、歯の生え初めた頃で、お房はよく母の乳房を噛んだ。「あいた――あいた――いた――いた――ち、ち、ちッ――何だってこの児はそんなに乳を噛むんだねえ――馬鹿、痛いじゃないか」と言って、母がお房の鼻を摘むと、子供は断れるような声を出して泣いた。
「馬鹿――」
と叱られても、お房はやはり母の懐を慕った。そして、出なくても何でも、乳房を咬えなければ、眠らなかった。
三吉は又、自分の部屋をよく出たり入ったりした。子供の泣声を聞きながら机に対うほど、彼の心を焦々させるものは無かった。日あたりの好い南向の部屋とは違って、彼が机の置いてあるところは、最早寒く、薄暗かった。