Japanische Klassiker mit Furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.748 Zeichen · 254 Bildschirme
九
汽船は国府津へ着いた。男女の乗客はいずれも陸へと急いだ。高い波がやって来て艀を持揚げたかと思ううちに、やがてお種は波打際に近い方へ持って行かれた。間もなく彼女は達雄が悄然と見送ってくれたその同じ場処に立った。
六月の光は相模灘に満ちていた。お種は岸を立去るに忍びないような気がした。夫と一緒に歩いた熱い砂を踏んで行くと、松並木がある、道がある、小高い崖を上ったところが例の一晩泊った旅舎だ。
「オヤ、只今御帰りで御座いますか。大層御緩りで御座いますネ」
何事も知らない旅舎の亭主は、お種が昼飯の仕度に寄って種々なことを尋ねた時に、手を揉んだ。
豊世や、森彦や、それから留守居している実の家族にも逢われることを楽みにして、まだ明るいうちにお種は東京へ入った。
九
豊世が借りている二階はゴチャゴチャとした町中にあった。そこは狭い乾燥した往来を隔てて、唯規則正しく、趣味もなく造られた同じ型の商家が対い合っているような場所である。豊世がこういう町中を択んだのは、通学の便利の為で、彼女は上京する間もなく簿記を修めることにしていた。そこへお種が尋ねて行った。
姑と嫁とは窮屈な二階で一緒に成った。