Japanische Klassiker mit Furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.748 Zeichen · 254 Bildschirme
あれで母親さんが居ようものなら、それほどの決断には出られなかったかも知れません。田舎はそこへ行くと難有いもので、橋本の家の形も崩さずに遣って行かれる。薬は依然として売れてる――最早嘉助の時代でも有りませんから、店の方は若い者に任せましてネ、私は私で東京の方へ出ようと思っています。これからは私の奮発一つです」
「へえ、正太さんも東京の方へ……実は僕も今の仕事を持って、ここを引揚げる積りなんですが……」
「私の方が多分叔父さんよりは先へ出ることに成りましょう」
「随分僕も長いこと田舎で暮しました」
「お仙はどうしたかいナア」と不幸な娘のことまで委しく聞きたがる母親を残して置いて、翌日正太は叔父の許を発って行った。
そろそろお種も夫の居ない家の方へ帰る仕度を始めた。達雄が残して行った部屋――着物――寝床――お種の想像に上るものは、そういう可恐しいような、可懐しいようなものばかりで有った。
「三吉さん――私もネ、今度は豊世の生家へ寄って行く積りですよ。寺島の母親さんにも御目に掛って、よく御話したら、必と私の心地を汲んで下さるだろうと思いますよ」
隣室に仕事をしている弟の方へ話し掛けながら、お種は自分の行李を取出した。